15 8月 サイバーセキュリティ強化に向けたコンサルティングの費用とは?
サイバーセキュリティの強化は、業務のデジタル化が進んでいる今日においては欠かせない取り組みです。コア業務に関わるシステムだけでなく、それらを内外の脅威から守り、リスクの小さい業務環境を整備することで、長期的な事業継続を可能にします。
またサイバーセキュリティを強化する上では、その領域において専門的な知見を持ったセキュリティコンサルタントへ協力を依頼するケースも少なくありませんが、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
今回はサイバーセキュリティ強化につながる、コンサルティングへの依頼に際して発生する費用の内訳や、その重要性についてご紹介します。
セキュリティ対策を怠った際の損失は?
そもそも、セキュリティ対策を怠ったことで具体的にどのような被害が生まれているのでしょうか。ここでは世界の事例や特定企業のサイバー攻撃の被害事例について、損失額に注目しながら実情を確認しておきましょう。
2021年は世界で約660兆円の被害額を計上
2021年に発表された調査によると、サイバー攻撃によってもたらされた被害総額は、世界全体で6兆ドル、当時の日本円にしておよそ660兆円もの金額に達しているとされています。
参考:https://ampmedia.jp/2021/09/15/google-cyber-security/
この額は決して過大評価ではなく、サイバー攻撃によってもたらされるあらゆる損失を計上すると、このような数字になる可能性は高いと言えるでしょう。
サイバー攻撃による損失は、システムをロックして身代金を要求するランサムウェアのような、直接的な攻撃に限った話ではありません。情報流出によって社内の個人情報や機密情報が流出すれば、流出を食い止めるために生産性を低下させてでも事態を収集しなければなりませんし、再発防止に向けた徹底したセキュリティ強化、及び賠償請求なども発生します。
社内システムがダウンすれば業務再開にも時間がかかるため、こういった間接的な被害も勘案すると、660兆円という日本のGDPを超える被害額に達します。
また、この損失額はこれからも増加する可能性が高いとされており、セキュリティ対策が進まなければ、2027年には1,154兆円に膨らむという試算もあるため、楽観視できないのが現状です。
特定企業を狙った攻撃も増加
サイバー攻撃は必ずしも不特定のターゲットに実行されるとは限らず、大手企業を狙い撃ちにした攻撃も少なくありません。近年は多くの機密情報を抱える大手組織を狙った攻撃も増加傾向にあり、2020年には欧州最大とされるドイツの病院運営会社がランサムウェアの被害に遭い、150万ドル以上の要求が行われたとしています。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC14DWN0U1A011C2000000/
不特定多数の企業へ無作為に攻撃を仕掛けるのではなく、周到に準備した攻撃を一つの会社に実行する方が成功率も高く、得られる身代金も高額であることから、今後はこのような高度な攻撃が世界中で実行される可能性があるとして、専門家は警鐘を鳴らしています。
1時間の製造停止で1億円を超える損失という試算も
身代金要求による直接的な金銭被害はもちろん、製造業界ではシステムダウンによって生産が停止し、多くの損失を計上しているケースが見られます。
例えば高度な技術力とクオリティが求められる自動車製造会社がシステムダウンに陥った場合、1時間製造が止まるだけで1億円を超える損失が生まれると資産されており、セキュリティ対策の必要性を強く訴えています。
参考:https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2104/02/news013.html
セキュリティ対策には費用と時間がかかるものの、それを上回る被害が身近に発生するリスクがある以上、必要コストとして計上することは免れないでしょう。
サイバーセキュリティ対策が重視される背景
サイバーセキュリティ対策の重要性が高まっている理由はどこにあるのか、ここで改めて確認しておきましょう。
サイバー犯罪が増加しているため
1つ目の理由は、単純なサイバー犯罪の発生件数の増加です。2021年4月に警視庁が発表したデータによると、国内のサイバー犯罪発生件数は過去最大となる1万2,000件に達しているということです。
参考:https://news.yahoo.co.jp/articles/342a125c53c817ca6da367cc12413903d4570a72
世界全体で増加しているのはもちろんですが、日本だけで見ても過去最高件数を毎年更新する勢いで被害リスクが高まっている今日では、状況に応じたセキュリティの強化は欠かせないと言えるでしょう。
業務のデジタル化(DX)が進んでいるため
2つ目の理由は、業務のデジタル化が進んでいるためです。生産性向上やコスト削減に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)は日本企業に不可欠な取り組みとされており、多くの企業が積極的なIT活用を進めています。
業務に必要な環境のデジタル化はもちろん大切ですが、その環境を守るためのセキュリティ強化も行わなければ、深刻なサイバー攻撃の被害者となってしまう可能性が高いことは頭に入れておくべきです。
サイバー犯罪の手口が多様化・複雑化しているため
3つ目の理由は、サイバー犯罪の手口が多様かつ複雑になっていることです。従来のサイバー犯罪は散発的で、単独の反抗というケースも少なくありませんでしたが、サイバー攻撃を企業に向けて行うことで、多額の身代金を要求できることがわかってから、組織的かつ体型的な攻撃が行われるようにもなってきました。
組織的なサイバー攻撃から一企業を脆弱なセキュリティ対策で守り切ることは難しく、標的となり得る企業もまた、相応のセキュリティ対策が求められています。
セキュリティコンサルティングによって得られる効果
このようなセキュリティ対策需要の高まりに伴い、問い合わせが増えているのがセキュリティコンサルタントです。
セキュリティコンサルタントはいわばセキュリティの専門家で、クライアントの必要に応じた対策の検討と施策の実行を促しますが、相談によってクライアントは以下のようなメリットを期待できます。
セキュリティ人材の不足を補える
1つ目のメリットは、セキュリティ人材の不足を補える点です。セキュリティ人材はいわゆるDX人材にも分類される、デジタル分野に精通した知見とスキルセットを持った人材です。
このような能力を持った人材の確保は需要増加に伴い困難になっていますが、外部のコンサルタントに依頼することで、自社で満足に人材を揃えられない場合でもその不足分を補ってもらうことができます。
効果的なセキュリティ強化を進められる
2つ目のメリットは、効果的なセキュリティの強化が実現することです。セキュリティ対策とは一言で言っても、企業が抱えている課題に応じて実装すべきセキュリティ対策は異なるため、見当違いのセキュリティ強化を行なっても期待しているような効果が得られない場合があります。
セキュリティコンサルタントに依頼することで、そのような無駄なセキュリティ施策に予算を割くことがなくなり、予算の範囲内で効果的な対策を行えるよう指針を与えてもらえます。
全社的なセキュリティ対策の改善が期待できる
3つ目のメリットは、全社的なセキュリティ強化が見込める点です。業務のデジタル化が進むと、企業は一元的にシステムを運用し、特定の部門でのみシステムを管理、活用するわけではなくなります。
その際、セキュリティ対策を部門単位ではなく俯瞰的に検討できる外部コンサルタントの手を借りることができれば、特定の部門にとらわれることなく、全社的なセキュリティの強化を進められるでしょう。
セキュリティコンサルティングを受ける際に考慮すべきポイント
セキュリティコンサルタントを依頼する際には、あらかじめ以下の2つのポイントを念頭に置いた検討が求められます。
セキュリティリスクには常に賠償と責任がつきまとう
1つ目のポイントは、そもそもなぜセキュリティを強化しなければならないのか、という理由について考えておくことです。
サイバー攻撃が発生した際、企業は身代金の要求に応えるだけでなく、情報流出に伴い被害が発生したクライアントや関係会社に対して賠償金が発生したり、情報を預かる組織としての責任問題に発展することとなります。
こういった手続きを実行する上では、多くのお金と人員と時間、そして企業のブランド価値を失うこととなってしまいます。不要な損失を回避するためには、セキュリティ強化によってそのリスクを少しでも低下させる企業努力が欠かせません。
リスクを考慮の上予算を十分に確保する
2つ目のポイントは、上記のようなリスクと天秤にかけ、十分に採算が取れるようなセキュリティ予算を計上することが重要である点です。
十分なセキュリティ対策を施す上では、ツール導入やコンサルタントへの相談費用など、相応の費用が発生することとなります。これらの予算を必要以上にカットすることなく、その重要性を理解し潤沢なリソースを確保することで、初めてリスクの回避につながります。
初期費用やシステムの維持管理に相応の予算を割き、セキュリティ強化に努めましょう。
おわりに
セキュリティコンサルティングを専門家から受け、自社システムの確実な強化につなげることは、サイバー攻撃の増加や手口の複雑化を考慮すると、今日の企業には欠かせない取り組みと言えます。
特にIT関連のノウハウの蓄積が進んでいない企業ほど重要になるため、早期のセキュリティ強化に向けたコンサルティング依頼やシステムの導入を検討しましょう。